強さを見た日


中学生になり、

サッカー部に入部した。

1歳上の兄には、

「怖い先輩が多いから辞めたほうがいい」

と勧められたが、

オレはサッカーが好きだった。

確かに、

見てみると怖そうな先輩は多かった。

キャプテンは、

少し小柄だった。

でもその中で、

確かにリーダーシップがあった。

中1のオレは、

その後、衝撃的な光景を見ることになる。

3年生最後の大会が近づいた、

ある日の練習。

シュート練習のあと、

キャプテンが、

控えのゴールキーパーに向かって言った。

「お前は悔しくねぇのか?」

顧問も先輩たちも見ている前で、

何本も、何本もシュートを打ち続けた。

その迫力に圧倒された。

控えも3年生。

レギュラーも3年生。

そしてキャプテンも、

同じ小学校出身。

小学校から一緒の同級生に対して、

本気でぶつかる。

気の抜けた練習が、

許せなかったのだと思う。

今でいう、

カリスマ性があったのかもしれない。

実際にキーパーをしている姿も見たことがあるが、

控えのキーパーより上手かった。

だからこそ、

手を抜いているのがわかったのだと思う。

オレだけでなく、

周りの先輩も、

顧問の先生も、

ただ見守るしかなかった。

そのとき思った。

キャプテンとは、

こういう人がなるのか。

あの強さと、

同級生を本気で追い込む覚悟は、

オレにはないと思った。

20年ほど前、

結婚式でそのキャプテンに会った。

挨拶を交わす程度だった。

なぜか話せなかった。

あの日の出来事を話せばよかったと、

今でも少し後悔している。