あの頃の母

家族編

母はとても強い人だ。

兄が不登校になったとき、

母が相当参っている雰囲気を感じていた。

当時は「不登校」ではなく「登校拒否」と言われていた時代だった。

学校へ行かないことは、ほとんど悪のように扱われていた。

父は「学校に行かないのは世間体が悪い」と母に言ったらしい。

相談相手にもならない状態だったのだと思う。

家の空気も微妙だった。

兄に対して怒りもあった。

自分が学校に行かないことで、オレがどれだけ嫌な思いをしているか、

兄はどれだけ理解しているのだろう。

先生や先輩から

「兄は何で学校に来ないんだ?」

と聞かれるのが一番嫌だった。

同級生が腫れ物に触らないように接してくれていることを、

感じることもあった。

ある時、母と兄の話になり、

母が「お前にも迷惑かけてゴメンね」と言った。

そのときオレはこう言った。

「冷やかしてないで、心配なら家に様子を見に来たらいい。」

その時、母は

この子なら、大丈夫。

と思ったそうだ。

十年くらい経ってから、

あの言葉にどれだけ助けられたかを知った。

あの時のことは、今も覚えている。

それでも、あの頃の母の気持ちは全部はわからない。

自分も父親になり親の気持ちがわかるようになってきた。

やっぱり母は強い人だと。